質量分析の価格と価値を見極める

質量分析の価格と価値を見極める

記事作成日

2025-04-09

最終更新日

2025-04-09

― コストだけで語れない、質量分析という投資の本質 ―

質量分析――。それは、目に見えない分子の世界を数値化し、可視化する極めて高度な分析技術です。

創薬や診断、生体分子研究、食品・環境分野まで、質量分析が果たす役割は年々拡大しつつあり、精度とスピードの両立が求められる時代において、もはや不可欠なインフラと言っても過言ではありません。

一方で、「質量分析を導入したいが、価格がネックで検討が進まない」「見積を取ったが、果たして投資に見合うのか判断できない」といった声も多く聞かれます。

本コラムでは、質量分析の価格に関する現実的な情報を共有しながら、「費用」ではなく「価値」という視点で、分析技術の導入と活用について深掘りしていきます。

◆ 質量分析計の価格帯と内訳

まずは、質量分析計にかかる主な費用項目を見ていきましょう。

◎ 初期導入費用(装置本体+周辺機器)

装置タイプ                  主な用途               本体価格(目安)
単四重極                 簡易ガス分析           500~1,000万円
(QMS)                  ・基礎測定                  
三連四重極          食品向け定量分析       2,000~5,000万円
(TQMS)              ・臨床-環境     
飛行時間ト              高分解能               2,500~4,500万円
(TOF-MS)           ・定性分析   
ハイブリッド         プロテオミクス         4,500万円
(Q-TOF              ・バイオ医療研究                〜1億円以上
/ Q-Orbitrapなど)             

これに加えて、イオナイザー(ESI, MALDIなど)、クロマトグラフィーシステム(LC, CEなど)、排気・温度管理装置、設置工事などが必要になることもあります。

◎ 維持・運用コスト(年間)

· 保守契約費:50万〜300万円程度

· 消耗品(カラム、バイアル、溶媒など):数十万円〜

· 機器操作・解析に必要な人件費・教育費

· ソフトウェア更新費・PC更新・ストレージコスト

特に、人件費や教育コストが軽視されがちですが、実は装置本体よりも長期的には大きなウエイトを占める場合もあります。

◆ 質量分析は「コスト」ではなく「投資」である

高額な価格だけを見ると、「質量分析=高嶺の花」と感じられるかもしれません。しかし本質は、“何を得たいのか”という目的と結びつけたとき、その価格はコストではなく投資になります。

たとえば──

· 医薬品の候補化合物を早期にスクリーニングできれば、数千万円〜億単位の開発コスト削減につながる

· 臨床検体の迅速かつ精密な解析が可能になれば、診断までの時間を短縮し、医療機関の運営効率や患者アウトカムを向上させられる

· 食品や環境中の微量成分の可視化によって、製品信頼性や社会的評価が高まる

こうした成果に対し、数千万円の装置投資が**「高い」のか「安い」のか**は、決して単純な価格比較では語れないはずです。

◆ 導入せずとも始められる「受託分析」の活用

プレッパーズでは、「まず試してみたい」「一時的な研究ニーズに応じたい」といった方々に向けて、受託分析サービスを主な事業として展開しています。

◎ 受託分析の費用イメージ(目安)

· タンパク質・ペプチド質量測定:2〜5万円/試料
· タンパク質・ペプチド一次構造推測:5〜10万円/成分
· 低分子化合物定性分析・構造推測:15〜30万円/試料
· 定量分析(複数検体・複数項目):12万円/試料
· カスタムプロトコル開発:個別見積・柔軟対応

装置導入に比べ、圧倒的に低コストで高品質なデータ取得が可能です。また、装置導入の前段階として実際に使用感や分析結果を体験しておくことで、より的確な判断材料にもなります。

◆ ベンチャーだからこそできる、柔軟な提案

私たちプレッパーズは、浜松医科大学発の質量分析専門ベンチャーです。 大手メーカーとは異なり、私たちは「汎用品を大量に販売する」スタイルではなく、研究現場や臨床現場の“本当の困りごと”に向き合うことを出発点としています。

そのため、価格面でも以下のような柔軟な対応が可能です:

· 小規模・限定用途に特化したカスタム装置の開発

· 共用施設・企業間連携による共同利用モデルの提案

· 公的補助金や研究費申請に伴う機材選定の支援

価格ありきではなく、「目的から逆算した設計・提案」こそが、私たちの真骨頂です。

◆ まとめ ―「いくらかかるか」ではなく「何が得られるか」

質量分析の価格を見たとき、多くの方が最初に感じるのは「高そうだな」という印象です。 しかし、問いを変えてみてください。

この分析によって、どんな発見や価値が生まれるのか? そしてそれは、いくらの価値があるのか?

コストの内訳を正しく知り、「装置を買う」だけでなく「技術を活かす」視点を持つことで、質量分析は真の投資先として見えてくるはずです。

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