「質量分析」は研究、製薬、環境モニタリング、食品安全性などの多岐にわたる分野で利用されています。
質量分析の具体的利用法としては、タンパク質を同定できることが挙げられます。
では、実際にどのような手法で質量分析を用いればタンパク質を同定できるのでしょうか。
この記事では、質量分析を用いたタンパク質の同定方法の原理や方法、その種類について詳しく解説します。
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質量分析は、物質の質量や構造を高精度に測定する技術です。具体的には、物質をイオン化し、それを真空中の電場や磁場中で運動させて質量(m/z*)を測定します。
この方法は、低分子の定性・定量分析のみならず、タンパク質の研究においても重要となっており、複雑なタンパク質の構造や相互作用を解明するのに役立っています。
*m/z:mはイオンの質量を統一原子質量単位で除した値、zはイオンの電荷数。イタリック体で表記し、読み方はエム・オーバー・ズィー。
なお、質量分析の原理に関する詳細な説明は「質量分析計|基礎知識や原理、応用例を専門家が簡単解説」で詳しく解説しています。
では次に、質量分析を用いてタンパク質を同定する方法について解説します。
代表的な方法として以下の2つが挙げられます。
この方法は、ペプチド断片の質量を質量分析計で測定し、それをもとにタンパク質のアミノ酸配列を推定する手法です。
具体的な手法としてはタンパク質を特定の酵素でランダムに切断し、得られる断片化ペプチドの質量を測定します。
また、多くの場合、各断片化ペプチドから得られるイオン(ペプチド分子にプロトンが複数付加した多価イオン)のMS/MS(プロダクトイオン分析)を同時に行い、各ペプチドのアミノ酸配列情報を推定します。
得られるペプチドの断片について、質量情報と推定アミノ酸配列情報から、データベース検索によってタンパク質を同定します。
この手法は、主に高分解能LC-MS/MS装置を用いて行います。低分解能装置でも可能ではありますが、タンパク質同定の確度が低下してしまいます。
株式会社プレッパーズでは、サーモフィッシャーサイエンティフィック社のQ-Exactive(四重極とオービトラップのハイブリッドタンデム高分解能MS/MS装置)にナノLCを接続したシステムを用います。
タンパク質を特定の酵素で分解し、そのペプチドの質量パターン(フィンガープリント)を作成します。
質量パターンは特定のタンパク質について固有のものであるため、このフィンガープリントを既知のデータベースと照合することで、タンパク質の同定が可能になります。
この方法は、一般的にはMALDI-TOFMSが用いられますが、株式会社プレッパーズでは更に高質量分解能であるMALDI-FTICRMSを用います。
株式会社プレッパーズでは、質量分析を用いたタンパク質の同定や解析を受託しています。
研究開発等において質量分析をご活用されたいお客様は、ぜひ一度当社にお問い合わせください。
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一方で、質量分析を用いずにタンパク質を同定する方法もあります。ここでは一例として、プロテインシークエンサーを用いた同定方法を取り上げます。
質量分析を用いないタンパク質の同定方法の代表的なものとして、プロテインシークエンサーを用いた同定法が挙げられます。
この手法は、タンパク質のアミノ酸配列を直接解読する方法です。ペプチド断片を一つずつ順番に切り出し、それぞれの質量を測定することで、アミノ酸の配列を推定します。
古典的な方法であり、大変な時間と労力を必要とするものの、現在も幅広く使われているタンパク質同定法の一つです。
プロテオームは、特定の時点で細胞、組織、あるいは生体全体に存在するすべてのタンパク質を指します。
プロテオーム解析は、これらのタンパク質の構成、量、機能、相互作用などを全体的に調査する研究手法です。
質量分析を活用することで、サンプル中のタンパク質を同定し、その発現レベルの変化やポストトランスレーショナル修飾などの詳細な情報を得ることができます。
特定の疾患の進行や診断に関連するタンパク質(バイオマーカー)を同定するために用いられます。
例えば、がん細胞と正常細胞のプロテオームを比較することで、疾患特異的なタンパク質の発現変動を検出することが可能です。
その他にもタンパク質の同定は、食品安全の担保や治療薬の開発などにも活用されています。
本記事では質量分析を用いたタンパク質の同定法を中心に説明してきました。
質量分析はタンパク質の研究において非常に有用なツールであり、幅広い分野において欠かせない技術であることが分かります。
我々プレッパーズは質量分析やその他の事業に関して随時ご相談をお待ちしていますので、ぜひご気軽にお声がけ下さい。